家に帰り、さっそくパソコンの電源を入れる。検索ホームページで「チカ釣り」と入れてボタンを押すと、釣りのホームページがたくさん出てきた。特に興味を持ったのがこれ。
その後もいろいろ教えてもらいつつ、頭の中では、チカ釣り、というかチカフライへの想いが膨らんでいった。
「とても参考になりました。ありがとうございます。まずは、チカ釣りから始めてみようと思います。」
「そう、がんばってね。もし最初に釣れちゃったら、あなたも釣り好きの仲間入りね。保証するわ(笑)」
「・・・(笑)」
ニヤニヤしながら会釈して、その場を離れた。
そのまま市内の釣具店に行こうかと思ったが、少しネットでも調べてみたくなったので、その日はまっすぐ家に帰ることにした。
埋め立て工事が行われる前、周囲は草ぼうぼうで悪臭を放っていたころの運河だ。水面には油が浮いていた。
釣りといっても、竿も仕掛けもすべて父が用意してくれて、自分はエサを針につけて水中にたらすだけ。それでも釣れるときは良型のチカが結構釣れて、竹編みの「びく」がいっぱいになることもあった。
臭い運河で釣ったチカを食べることには抵抗があったが、父は「ライポンで洗えば大丈夫だ」と言って、釣ってきたチカを(ライポンFではなく)台所のママレモンで洗い、よくすすいだ後、フライにしてくれた。
おっかなびっくり食べたチカフライの味がよみがえる。
最高に美味かった。
親切さに甘えて、自分が一番知りたいことを素直に質問してみた。
「何にも知らないまったくの素人なんですが、どんな釣りから始めたらいいでしょう?」
一瞬、気まずい空気が漂ったような気がしたが(まったく知らない分野で人と話をするのは緊張の連続だ)ひと呼吸おいてからにっこり答えが返ってきた。
「港の岸壁で小物釣りがいいんじゃない。いま時期だったらハゼ釣りとか、チカ、イワシ、サバ、あとアジなんかも釣れるよ。」
「へぇ、ハゼが釣れるんですかぁ。でも投げ釣りって難しそうですね。」
「投げない釣りというのもあるよ。そしたらチカ釣りとかいいんじゃないかい?」
チカなら、小学生の頃に親父に連れられて運河で釣ったことがある。