linkbait のブログ
ベテラン釣師とニシン
いつもの場所で糸をたらすと、この日も15cm前後のアブラコが釣れた。しゃがんで、釣れた魚を針から外していると、上から、
「お、アブラコちゃんですな」
と声がした。見上げると、いかにも凄そうなベテラン風の紳士だった。
「こんにちは」
「はい、こんにちは。今日は、サバ、釣れてるかい?」
「サ、サバですか、、、えーと、あの、わかりません」
しどろもどろの僕にはかまわず、ニコニコしながら隣にどっしりと腰を下ろすと、竿と仕掛けの準備を始めた。実に手際が良い。
「いまな、ここらへんでサバが釣れてるのさ。昨日も来て結構釣れたんだ。エサ撒けばすぐ寄ってくるよ、見ててごらん。」
外海にオキアミをぱっと撒いた後、同じエサを入れたコマセネットとサビキの付いた糸を降ろす。程なく、言ったとおりに魚が寄ってきて、すごい勢いで釣り始めた。10~20cmくらいのサバ。2連、3連は当たり前だ。
「す、すごいっすね、、、」
「はっはっは。あんたもやってみるといい。ほれ」
そう言って新品のサビキを手渡そうとした。なんて気前の良い人なんだろう。
「あ、いえ、サビキなら僕もチカ釣りのを持っているので大丈夫です。ただ、今日はオキアミを持ってきてないんですが、エサなしでも釣れるでしょうか?」
「ああ、エサが撒いてあれば釣れるよ。
海の観察
翌週のある日、今度は明るい夕方のうちに南防波堤へ。
クラゲはまだ残っていたが、数はかなり減っていた。消えたクラゲはどこへ行ったのか。それを考えると夜も眠れない。
ん?いつの間にこんなに海草が生い茂ったのかな、と思ったら、うわ、小魚の大群だ!あまりの数に一瞬のけぞった。
こんなふうに、海は同じ場所でも日によって全然表情が違うことがあって面白い。見ると、この日は内海が見事にないでいた。まるで鏡のよう。
と、写真をよく見ると明らかに境界があるのがわかる。鏡のようなところとそうでないところ。もしかして、潮目?
潮目というのは、流れや温度など性質の異なる海水が接するところにできる境界線のことで、プランクトンが集まっていたり、魚が集まりやすい水の流れができていたりして、良い釣り場になる、、、というようなことをネットで読んだことがあった。潮目を見つけたら、狙って遠投すると大物が釣れたりするらしい。
でも、港内に潮目なんてできるんだろうか?
試しにちょい投げしてみればよかったのだが、帰って写真をパソコンに取り込むまで、この境界線には気づいてなかったのだった。
ただボケーっと写真を撮っていた自分が情けない。
これからは海面の様子をよく観察しようと思った。
夜釣りの寒さ
別の日、初めて夜の南防波堤に行ってみた。一応、LEDのヘッドランプキャップライトは用意していったが、実際に釣りをするかどうかは様子を見てから決めようと思った。
夜の9時過ぎ、実際に行ってみると予想外の混みようにびっくり。イカ釣りなのだろうか、夜の南防波堤に来る人がこんなに多いとは知らなかった。なんだか少し気が楽になって、ちょっとだけ竿を出してみることにした。と言っても、イカの釣り方などは知るわけもなく、暗い中でいつもと同じことを試してみるだけ。
周囲に照明のない南防波堤から見る星空は最高。流れ星も見ることができた。ただ、当然ながら寒い。とにかく寒い。本当に寒い。夜釣りをするならスキー並みの(それ以上?)防寒対策が必要と思い知った。
過去アブラコなどが釣れた場所でスタートするも全然ダメ。ただ立っていると凍えそうなので、移動しながら様子を見ていると、いつもより基部に近いところで竿先が動いた。引き上げてみると22cmくらいのアブラコ。エサを付け直すと間もなく再度ヒット、17~8cmくらいのガヤ。
ここで粘ればもっと釣れるかなと思いつつ、そろそろ体の冷えも限界。肩はこわばり、トイレにも行きたくなって、上から下からつらいので結局1時間弱で終了。
初めての夜釣りはとにかく寒かった。夜の海はたとえ穏やかでも暗くて不気味。
クラゲ来襲
2日後。この日は4時半から5時少し過ぎまで。
天気はくもり、少し風がある。かなり寒い。手袋なしの手は結構つらい。潮が満ちているのか、海面が高い感じがした。外海は大きなうねりのような波。ずっと見ていると酔いそうだ。
防波堤入り口の浅いところにおびただしい数のクラゲを発見。このクラゲはその後どこへ行ったのだろうか。やはり誰かが処理しているのか、それとも自然に溶けて消えていくのか?
防波堤に上って外海を見ると、海面にきらきらと銀色の光がうごめいていた。イワシか何かの群れのようだ。気づくと岸壁付近にカモメが集まっていた。ごちそうタイムらしい。
いつもの場所でスタート。開始間もなく小さいアブラコ。12cmくらいか。今回は針から外す前の状態で写真を撮ってみたが、暴れ動くのでどうしても魚がブレてしまう。撮影後、初めてリリースしてみる。
その後、ぱったりアタリが出なくなった。暗くなってきて、さっきのリリースを後悔しはじめたとき、竿先が動いた。一呼吸置いて引き上げるとガヤだった。15cmくらい。
釣った魚はいつもならそのままビニール袋に入れておくのだけれど、この日は用意してきた果物ナイフで目の斜め後ろをザクリとやってみた。一瞬、目がギョロリとむいて体を反り返した後、すぐに動かなくなった。目は僕を睨みつけているようだった。
糸がからまった
数日後、釣りの時間を作れる日がやってきたが、朝からあいにくの雨。
が、午後になって雨が上がり、日が差してきたので、またまた南防波堤へ。
この日は、海の底を確かめる間もなく、ブラーを下ろすとすぐに魚が食いついてきた。例によってエサばかり持っていかれて釣れはしないのだが、アタリの頻度は明らかに今までと違っていた。技術があれば、この日は大漁だったかもしれない。
でも、入れる、食われる、逃げられる、エサ付け直しと、この繰り返しで時間ばかり過ぎていった。
それでも、タイミングを少しつかんだか、薄暗くなってブラーを夜光に変えた頃からアブラコを釣り上げられるようになった。よっしゃ、どんどん釣るぞー、と気持ちがたかぶって勢いよく糸を送り出したら見事にリールにからまった。薄暗い中では復旧困難で泣く泣く終了。結局、ウミタナゴ2匹、アブラコ3匹。これまでで一番大きい20cmのアブラコが釣れたのはうれしかったが、まだ釣れそうなのに終了となったのは残念だった。。
イイ気になると足もとをすくわれる。
釣りは人生そのものか。
家に帰って、からんだ糸をほどきながら、そんなことを思った。
ウミタナゴ再び
別の日、なんとかまた時間を作って南防波堤へ。
風が吹き、やや波もあった。ときおり風が強まり、竿先が風に押される感じ。今日は難しいかな。
この日は、先日ぐしゃぐしゃになってしまったサビキに付いていたオモリを再利用して、短い糸で先端に針をつなげた廃品再利用仕掛け(?)を持って行った。ちょっとだけ試してみたが、やはり全然釣れない。ブラーのひらひら落ち葉のように舞う動きがないとダメなのか。
時間がもったいないので、すぐに使用を中止。代わりに、別の色のブラーを試してみることにした。夕暮れどきなので、マヅメ(日の出や日没前後の時間帯)に有効とされるゴールドで再スタート。
アタリは何度もあったが、例によってアワセが下手くそで逃げられる。
結局、アブラコとウミタナゴが1匹ずつ釣れた。17~8cmくらい。
今日もなんとか魚を持って帰ることができた。
アブラコ、ちゃんちゃん焼き
翌日の夕方も同じ場所に行ってみる。
一日一匹活動2日目、夕方の30分一本勝負。今日も釣って帰れるのか?
この日は何度もアタリがあるが、毎回エサだけが持っていかれる。
なんだか魚にあざ笑われているような気がした。
くそっ、という気持ちが出てきたエサの付け直し4回目、やっと釣り上げた。19cmのアブラコだった。
時間切れ間際で終了。
今日も釣って帰れてよかった。
今回はちゃんちゃん焼きにしてみた。
美味しかったけれど、量が少なくて、どうにもさびしい。
夕方の釣り
あのガヤはまぐれなのか、それとも同じ方法で普通に釣れるのか?
別の日の夕方、30分だけ時間を作って同じ場所に行ってみた。
しばらくすると、ちょちょん、とわずかに竿先が動いたような気がした。巻き上げてみると、またまた初めて釣る魚。15cmくらい。
もしかして、憧れのカジカ?
この一匹だけだったけれど、一応この日も釣ることができた。
一日一匹活動。
空気がとても澄んでいた。海も穏やか。ここにいるだけで心が休まる。
平日の夕方だったためか空いていました。
釣った魚を上から見るとこんな感じ。
根がかり、ブラー、ガヤ
翌日、午後遅くにまた同じ場所に行ってみた。
全然飛ばない投げ釣り(のつもり)をやってみたが全然釣れない。いろいろやっていたが、そのうち仕掛けが海底にひっかって取れなくなった。根がかりと言うそうだ。かなり粘ったが何をどうやっても取れない。仕方なく糸を直接腕に巻きつけて力いっぱい引っ張ると、急にふっと軽くなった。糸を巻き上げてみると仕掛けが丸ごとなくなっていた。
仕掛けを失ったことと、ゴミを海底に残してしまったことの両方がショックだった。気をつけないと海洋汚染に加担することになるぞと思った。
愚かなことに予備の仕掛けはない。このまま帰るのは悲しいので、別に買っていたブラーを試してみることにした。以前、ホームセンターの釣具コーナーをぶらぶらしているときに見つけて、シンプルで簡単そうだという、ただそれだけの理由で買ってみたものだった。釣りを続けるには、これを使うほかなかった。
ちょい投げセットの説明書を見て覚えたユニノットで道糸をそのままブラーに縛りつけ、針にイソメを付けて足元に下ろす。
・・・やっぱり釣れない。
辺りが暗くなり、エサを付け替えるのにも難儀するようになってきた。
アブラコとの遭遇
土曜の朝の南防波堤は混んでいた。
無知丸出しの質問で、そんな基本的なことも知らんのか?という顔をされながらも、諸先輩のお話を聞いてまわる。みなさんカジカを狙っているらしい。
秋からは根魚(ねざかな)という種類の魚が釣れるそうだ。「根」とは海底の岩礁のことで、その周りに生息する魚が根魚だ。北海道ではアブラコ、ソイ、カジカなどが釣りの対象になるとのこと。鍋にしたカジカやソイの美味さは知っているので、もしそんな魚が自分に釣れたらどんなに嬉しいだろうと思った。
とにかくやってみようと、おっかなびっくり竿とリールをいじっていると、あまりにトンチンカンな扱いを見かねて、通りかかりのベテランの方が声をかけてくださった。リールの仕組み、各部の名称から、竿の持ち方、オモリと仕掛けの付け方、さらには投げ方まで親切に指導いただいた。おかげさまで、最初は何度やっても足元にドボンと落ちていたオモリが、とりあえず前方には飛ばせるようになった。とは言っても全然遠くには飛ばないのだけれど。
「これからうんと練習してね(笑)」
「はい、本当にありがとうございました」
「うん、でも、遠投できない人が中途半端に投げてみても釣れないかもね。魚って意外と足元にいたりするから、あなたの場合は、投げないでそのまま下を探ってみたほうがいいかもよ」
「そ、そうですか。